腸内細菌による病態の修飾:ピロリ菌と胃潰瘍・胃癌
Helicobacter pyloriは, 発見当初から胃炎, 胃, 十二指腸潰瘍との関連が示された. ピロリ菌は胃炎の主要原因で, 感染すると胃に組織学的胃炎を引き起こし, 除菌後2~3年で組織学的胃炎は消退する. また, 消化性潰瘍の危険因子で, 胃, 十二指腸潰瘍では除菌すべきという指針が出されている. 一方, 除菌により潰瘍再発は防止されるが, 胃食道逆流症が増加するという成績も出されている. 1994年には, ピロリ菌感染は“definite carcinogen”とWHO(IARC)に認定され, 胃発癌に関与すると結論づけられた. ピロリ菌は, 慢性胃炎, 萎縮性胃炎, 腸上皮化生...
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Published in: | 腸内細菌学雑誌 Vol. 12; no. 2; p. 103 |
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Main Authors: | , , , |
Format: | Journal Article |
Language: | Japanese |
Published: |
日本ビフィズス菌センター
1999
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Summary: | Helicobacter pyloriは, 発見当初から胃炎, 胃, 十二指腸潰瘍との関連が示された. ピロリ菌は胃炎の主要原因で, 感染すると胃に組織学的胃炎を引き起こし, 除菌後2~3年で組織学的胃炎は消退する. また, 消化性潰瘍の危険因子で, 胃, 十二指腸潰瘍では除菌すべきという指針が出されている. 一方, 除菌により潰瘍再発は防止されるが, 胃食道逆流症が増加するという成績も出されている. 1994年には, ピロリ菌感染は“definite carcinogen”とWHO(IARC)に認定され, 胃発癌に関与すると結論づけられた. ピロリ菌は, 慢性胃炎, 萎縮性胃炎, 腸上皮化生, ついで異型と進展する過程を促進する. 他にもピロリ菌の発癌機序として, 粘膜上皮細胞増殖増加, 粘液分泌および分泌細胞障害, 発癌物質の生成と運搬, ビタミンCなどの抗酸化剤の効果減弱, 誘導された炎症細胞の活性酸素などによる直接, 間接の変異誘導などがある. 最近, ピロリ菌には単独で胃発癌をきたし, また発癌促進作用もあることがスナネズミを用いた実験で報告された. ピロリ菌の病原性については疑問の余地はないが, “健常胃粘膜細菌叢”という概念にあてはまる面も指摘される. ワクチン開発に向けて, ピロリ菌の意義についてさらなる研究が必要である. |
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ISSN: | 1343-0882 |