4. 転移性脳腫瘍で発症した肺がんの1例

肺がんからの転移性脳腫瘍の治療方針を決める上で, 原発巣の組織型, 腫瘍コントロールの状況が重要である. 今回我々は, 脳転移で発症したnon-small lung cancerで, 原発巣コントロールの為の化学療法が脳転移巣にも著効を示し, 化学療法のみでフォローしている症例を経験したので報告する. 患者は63歳男性で, 既往歴は糖尿病のみで喫煙歴なし. 2009年4月頃より歩行時, 入浴時に右足のもつれを自覚し, 4月21日, 前医受診. 軽度の右足麻痺あり, MRIにて左前頭葉内側, 左小脳橋角部にGdで増強される病変および, CTにて右中, 下肺野に陰影あり, 肺腫瘍の脳転移の診断で2...

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Published in:THE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 60; no. 1; p. 88
Main Authors: 栗原秀行, 笹口修男, 大谷敏幸, 清水雄至, 松村賢
Format: Journal Article
Language:Japanese
Published: 北関東医学会 2010
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Description
Summary:肺がんからの転移性脳腫瘍の治療方針を決める上で, 原発巣の組織型, 腫瘍コントロールの状況が重要である. 今回我々は, 脳転移で発症したnon-small lung cancerで, 原発巣コントロールの為の化学療法が脳転移巣にも著効を示し, 化学療法のみでフォローしている症例を経験したので報告する. 患者は63歳男性で, 既往歴は糖尿病のみで喫煙歴なし. 2009年4月頃より歩行時, 入浴時に右足のもつれを自覚し, 4月21日, 前医受診. 軽度の右足麻痺あり, MRIにて左前頭葉内側, 左小脳橋角部にGdで増強される病変および, CTにて右中, 下肺野に陰影あり, 肺腫瘍の脳転移の診断で2009年4月27日, 当科紹介となった. 軽度右下肢の麻痺, および軽度の失語あり, 左前頭葉に広範な浮腫を伴う径1cmほどの腫瘍と, 左内耳道内に径7mmほどの腫瘍を認めた. 呼吸器内科にコンサルトし, 4月28日, 気管支鏡による生検術施行. Bronchioloalveolar-carcinoma, EGFR陽性の診断であった. まずは原発巣のコントロール目的に化学療法を施行し, その結果で定位的放射線治療など検討することとし, 酒石酸ビノレルビン, カルポプラチンによる化学療法を2クール施行した. この間に肺, 脳病変ともに縮小を示したが, 根治に至らなかったため, 定位的放射線治療, 維持化学療法を検討中である. 最近, 化学療法の発達で, 原発巣, 転移巣ともにある程度コントロールされる症例もあり, 転移性脳腫瘍の治療計画にあたり, 原発巣の組織型診断に基づく適切な化学療法は, 原発巣のみならず, 転移巣のコントロールにも重要な因子であると考えられた.
ISSN:1343-2826