2.NPPVによる治療に成功した化学性肺炎の一例
化学薬品工場に勤める28歳男性が, 工場のプラントメンテナンス作業後まもなく呼吸困難, 乾性咳嗽と発熱が出現. 近医受診にて急速に進行する呼吸不全を認め当院搬送となった. 来院時発熱, 頻呼吸, 起坐呼吸を認め, 両側肺野に進行する浸潤影を認めた. P/F 72.8と著明に低下し, ARDSと診断した. シベレスタット, ステロイド, CPFX投与とNPPV導入による呼吸管理を開始. NPPV導入1時間後のP/Fは370に上昇, 呼吸数も改善を認め治療効果有りと判定し, NPPVを継続した. 臨床症状, 画像所見の改善を認め第9病日にNPPVから離脱となり, 第19病日に退院となった. 全経過...
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Published in: | THE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 57; no. 3; p. 265 |
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Format: | Journal Article |
Language: | Japanese |
Published: |
北関東医学会
2007
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Summary: | 化学薬品工場に勤める28歳男性が, 工場のプラントメンテナンス作業後まもなく呼吸困難, 乾性咳嗽と発熱が出現. 近医受診にて急速に進行する呼吸不全を認め当院搬送となった. 来院時発熱, 頻呼吸, 起坐呼吸を認め, 両側肺野に進行する浸潤影を認めた. P/F 72.8と著明に低下し, ARDSと診断した. シベレスタット, ステロイド, CPFX投与とNPPV導入による呼吸管理を開始. NPPV導入1時間後のP/Fは370に上昇, 呼吸数も改善を認め治療効果有りと判定し, NPPVを継続した. 臨床症状, 画像所見の改善を認め第9病日にNPPVから離脱となり, 第19病日に退院となった. 全経過を通じ食事摂取, 呼吸リハビリテーションが可能な状態を維持することができた. ARDSに対するNPPVの有効性については賛否両論であるが, Antonelli1)らによれば臓器障害スコア(SAPSII)が低く(34点未満), 開始後1時間のP/F改善が得られれば挿管回避の可能性が高く積極的に試みるべきとされている. 本症例においてSAPS IIスコアは14点であった. 発症時期, 作業内容などから本症例におけるARDSは作業中の化学物質の吸入によると判断した. 起因物質は硫黄, フッ素化合物が推定されるものの, 特定には至らなかった. 化学性肺炎の多くは一時的な化学反応がもたらす肺障害が主体であり, 重度の呼吸不全を来した場合でも感染症によるものと比べ早期の陽圧換気療法導入によって良好なレスポンスが得られる可能性が高いと考えられ, 示唆に富む症例と考え報告した. 1. Antonelli M, Conti G, Esquinas A, et al. A multiple-center survey on the use in clinical practice of noninvasive ventilation as a first-line intervention for acute respiratory distress syndrome. Crit Care Med 2007; 35(1): 18-25. |
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ISSN: | 1343-2826 |