5.安静時に発症した特発性縦隔気腫の1例
特発性縦隔気腫は, 入院患者30,000-40,000人に1例と報告される比較的希な疾患である. 胸痛を主訴に来院することも多く, 胸痛を来す疾患の鑑別として考慮に入れるべきものである. 今回, 我々は, 安静時に発症した特発性縦隔気腫の1例を経験したので報告する. 症例は17歳, 痩せ型の男性. 主訴は前胸部痛, 頸部痛. 平成10年8月5日, 何の誘因もなく突然, 前胸部痛, 頸部痛が出現した. 軽減しないため翌日, 当科を受診. 初診時, 聴診上, 呼吸音は正常で心雑音は認めなかったが, Hamman徴候(胸骨左縁心拍動に同調した砕くような捻髪音)を認めた. 軽度の白血球増加を認める以外...
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Published in: | THE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 49; no. 4; pp. 300 - 301 |
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Format: | Journal Article |
Language: | Japanese |
Published: |
北関東医学会
1999
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Summary: | 特発性縦隔気腫は, 入院患者30,000-40,000人に1例と報告される比較的希な疾患である. 胸痛を主訴に来院することも多く, 胸痛を来す疾患の鑑別として考慮に入れるべきものである. 今回, 我々は, 安静時に発症した特発性縦隔気腫の1例を経験したので報告する. 症例は17歳, 痩せ型の男性. 主訴は前胸部痛, 頸部痛. 平成10年8月5日, 何の誘因もなく突然, 前胸部痛, 頸部痛が出現した. 軽減しないため翌日, 当科を受診. 初診時, 聴診上, 呼吸音は正常で心雑音は認めなかったが, Hamman徴候(胸骨左縁心拍動に同調した砕くような捻髪音)を認めた. 軽度の白血球増加を認める以外, 血液生化学検査および血液ガス所見に異常を認めなかった. 画像検査においては, 頸部X線で両側頸部, 前頸部にfree air, 胸部X線では, 両肩にfree airを認め, 両側頸部から横隔膜まで心陰影に沿って連続したfree airにより, 縦隔の拡大と気管の輪郭が走行区間に沿って鮮明に認められた. 胸部CTでは前縦隔, 後縦隔, 心膜周囲等にfree airを認めた. 以上, 特徴的所見より特発性縦隔気腫と診断し, 安静のみで経過観察したが, 軽快, 1週間後退院となった. 縦隔気腫の発症機序としては, Macklinが提唱したpulmonary alveoli over-distension theory(肺胞内圧が上昇し, 間質圧との間に圧勾配が生じ間質に空気が漏出し, 肺血管鞘を剥離しながら肺門に向かい, 縦隔へと進んで縦隔気腫が生ずる)が有力である. 本症例は何の誘因もなく安静時に発症しており, 肺胞内圧の上昇の原因を考えるのは困難である. しかし, 発症1ヶ月前, 喫煙を開始しており, これが何らかの契機になった可能性も推測されるが, 安静時に何の誘因もなく発症した特発性縦隔気腫の報告は文献上20例程しかなく症例の蓄積が必要と思われる. |
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ISSN: | 1343-2826 |