P-8)骨髄移植患者における口腔内および腸管内の常在菌検出の意義

目的:骨髄移植患者は好中球の減少, 抗がん剤投与の副作用である粘膜障害, 中心静脈カテーテルの留置といった血流感染を誘発しやすい易感染状態にある. 当院では骨髄移植患者の血流感染に対し速やかに対応すべく, 一般の細菌検査では通常行われない口腔内および腸管内の常在菌の同定, 薬剤感受性検査を実施している. そこで今回, 骨髄移植患者における常在菌の検出意義を検討することを目的とした. 対象:2000年7月から2004年6月までの骨髄移植患者において, 常在菌検索の依頼のあった58名を対象とした. 方法:方法は血液培養で何らかの細菌が検出された時点から2週間溯り, その間に検出された常在菌が血液培...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in:Journal of Nippon Medical School Vol. 71; no. 6; p. 467
Main Authors: 園部一成, 小嶋佳子, 小坂田直美, 篠山明宏, 青砥泰二, 飯野幸永, 里村克章
Format: Journal Article
Language:Japanese
Published: 日本医科大学医学会 2004
Online Access:Get full text
Tags: Add Tag
No Tags, Be the first to tag this record!
Description
Summary:目的:骨髄移植患者は好中球の減少, 抗がん剤投与の副作用である粘膜障害, 中心静脈カテーテルの留置といった血流感染を誘発しやすい易感染状態にある. 当院では骨髄移植患者の血流感染に対し速やかに対応すべく, 一般の細菌検査では通常行われない口腔内および腸管内の常在菌の同定, 薬剤感受性検査を実施している. そこで今回, 骨髄移植患者における常在菌の検出意義を検討することを目的とした. 対象:2000年7月から2004年6月までの骨髄移植患者において, 常在菌検索の依頼のあった58名を対象とした. 方法:方法は血液培養で何らかの細菌が検出された時点から2週間溯り, その間に検出された常在菌が血液培養の検出菌と同一菌種である場合を有効とし, その有効率を算出した. 結果:血液培養で細菌を検出したのは58名中33名, 計84例の57%(33/58)に認めた. この検出された菌種が, 常在菌検索の依頼により検出された常在菌と同一菌種であったのは2週間で5例の5.9%(5/84)であり, 全常在菌検出数からの一致率では0.5%(5/1,021)であった. この間に同一菌種以外の細菌が検出されたのは169菌種, 1人平均5. 1菌種であり, また血液培養で検出された菌種がその患者において初回分離菌種であったのは47例の60%(47/84)におよんだ. 考察:骨髄移植患者では, 血流感染を起こす確立が57%と極めて高かった. 常在菌の検出菌種と血液培養検出菌種が一致した有効率は5.9%と低く, 全常在菌検出数からの一致率(0.5%), 血流感染起因菌を推定するための菌種が多種類であること, 血液培養検出菌種の60%が初回分離菌種である, 等から骨髄移植患者において常在菌を検索することで血流感染の起因菌を推定することは難しく, コスト面をも考慮すると骨髄移植患者での常在菌検出の意義は低いと考えられる.
ISSN:1345-4676