第10回公開シンポジウム 近年話題の細菌感染症 その基礎と臨床
抗菌剤の開発によりなりを潜めてきた細菌感染症が, 抗癌剤の投与, 移植医療の普及と免疫抑制剤の投与, 熱傷や外科手術, そしてエイズなどの免疫不全患者において散見される「易感染者(compromized host)」の増大に伴い, 現代医療の中で再び頭角を現してきた. また, これまで細菌感染症とは無縁の病態と考えられてきた, 胃潰瘍や慢性胃炎, 胃癌や胃悪性リンパ腫といった様々な胃疾患が, ピロリ菌感染に関連したものであり, 実際にピロリ菌を抗菌剤などを用いて除菌した場合, こうした胃病変が再発を含め著明な改善をみることが明らかとなった. さらに最近では, 心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患と...
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Published in: | Journal of Nippon Medical School Vol. 67; no. 5; p. 357 |
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Main Authors: | , |
Format: | Journal Article |
Language: | Japanese |
Published: |
日本医科大学医学会
2000
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Summary: | 抗菌剤の開発によりなりを潜めてきた細菌感染症が, 抗癌剤の投与, 移植医療の普及と免疫抑制剤の投与, 熱傷や外科手術, そしてエイズなどの免疫不全患者において散見される「易感染者(compromized host)」の増大に伴い, 現代医療の中で再び頭角を現してきた. また, これまで細菌感染症とは無縁の病態と考えられてきた, 胃潰瘍や慢性胃炎, 胃癌や胃悪性リンパ腫といった様々な胃疾患が, ピロリ菌感染に関連したものであり, 実際にピロリ菌を抗菌剤などを用いて除菌した場合, こうした胃病変が再発を含め著明な改善をみることが明らかとなった. さらに最近では, 心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患と肺炎クラミジア感染との関連が指摘され, 注目を集めている. 以上のような状況において, 「近年話題の細菌感染症:その基礎と臨床」のタイトルを掲げ, 種々の細菌感染に伴って起こる病態を, 細菌自体の因子によって誘発されるものと, 細菌由来の因子に対する生体反応によって惹起されるものとに分け, 基礎, 臨床の双方から学内外の専門家にご参集戴きご講演を賜った. トップバッターの本学外科学第1教室の松倉則夫先生には, ピロリ菌による様々な胃病変の実体を臨床的側面からご紹介戴き, この細菌を除菌した場合の効果ならびに胃癌発生との関連性についてご講演を賜った. トップバッターの本学外科学第1教室の松倉則夫先生には, ピロリ菌による様々な胃病変の実体を臨床的側面からご紹介戴き, この細菌を除菌した場合の効果ならびに胃癌発生との関連性についてご講演を賜った. また, ピロリ菌研究の第一人者である杏林大学感染症学講座教授(本学兼任講師)の神谷茂先生には, こうしたピロリ菌の性状など基礎的な研究を含め, 胃病変を起こす病態生理を中心にご説明戴き, ピロリ菌と胃病変の関連を基礎, 臨床の双方の側面から理解することができた. 第3席の東邦大学微生物学教室教授山口恵三先生には, 細菌感染症の抱える重要な問題である薬剤耐性, 院内感染の状況を, また易感染者を中心として再燃してきた結核感染症の実態を結核予防会結核研究所副所長の石川信克先生にご講演戴いた. そして最後に, 毒素に対する免疫応答がその本体ではないかと推測されている「劇症型A群レンサ球菌感染症」, 俗称「ヒト喰いバクテリア」に関し, 本学微生物学免疫学教室の大国寿士先生よりご紹介を戴いた. どれも大変興味深い話題であったためか, フロアから多数の質問が出され, 活発な質疑応答が繰り返された. また, 70名を越える出席者も席を離れることなく, 長時間に亘り熱心に討議に参加されていたのが印象的であった. |
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ISSN: | 1345-4676 |