Entamoeba gingivalis(歯肉アメーバ)の特異的検出法の確立とその応用

目的:歯肉アメーバEntamoeba gingivalisは, 歯周病患部から高率に検出されることから, 歯周病の進展に関連があるのではないかと疑われているが, それらの報告は, アメーバの検出を染色, 検鏡によっており, その信頼性はあまり高いとはいえない. そこで, 当教室で既に決定した歯肉アメーバのSrRNAの遺伝子の塩基配列をもとに, 歯肉アメーバ特異的な配列を標的としたプライマーを作成し, PCRを行うことにより, 歯肉アメーバの特異的な検出法の確立を試みた. 方法:歯肉アメーバSrRNA遺伝子の塩基配列と, 既報の近縁真核生物や真菌のそれらとをコンピューターを用いて解析・比較し,...

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Published in:昭和歯学会雑誌 Vol. 15; no. 4; pp. 347 - 348
Main Authors: 菊田典子, 山本綾子, 後藤延一, 大竹徹, 宮沢康, 星政和, 出口勝敏, 長谷川紘司
Format: Journal Article
Language:Japanese
Published: 昭和大学・昭和歯学会 1995
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Description
Summary:目的:歯肉アメーバEntamoeba gingivalisは, 歯周病患部から高率に検出されることから, 歯周病の進展に関連があるのではないかと疑われているが, それらの報告は, アメーバの検出を染色, 検鏡によっており, その信頼性はあまり高いとはいえない. そこで, 当教室で既に決定した歯肉アメーバのSrRNAの遺伝子の塩基配列をもとに, 歯肉アメーバ特異的な配列を標的としたプライマーを作成し, PCRを行うことにより, 歯肉アメーバの特異的な検出法の確立を試みた. 方法:歯肉アメーバSrRNA遺伝子の塩基配列と, 既報の近縁真核生物や真菌のそれらとをコンピューターを用いて解析・比較し, 歯肉アメーバに特異的と考えられる配列をもとに, 一対のプライマーを設計し, 合成した. 常法に従って, 歯肉アメーバおよび比較対照とする近縁もしくは口腔内に存在する真核生物, 口腔常在菌等のDNAを精製し, 鋳型DNAとして用いた. PCRは, 熱変性94℃, 1分, アニーリング60℃, 1分, 伸張反応72℃, 1分を1サイクルとし, 40サイクル行った. 結果と考察:歯肉アメーバのSrRNA遺伝子の可変領域の塩基配列をもとに設計したプライマーを用いて, PCRを行ったところ, 歯肉アメーバ由来の精製DNAからのみ特異的に, 約1.4kpのPCR産物が得られた. 近縁の原虫, 口腔内の原虫・真菌・細菌, ヒト白血球由来の精製DNAからは, 増幅産物が認められなかった. 検出感度は, 約100個の歯肉アメーバの細胞が存在していれば, 検出できた. プラーク中の歯肉アメーバも同様に直接検出可能であることがわかった. 結論:歯肉アメーバのSrRNA遺伝子の可変領域に相補的なプライマーを設計し, 特異的な歯肉アメーバの同定・検出法を確立した. 今後, ヒト口腔内における歯肉アメーバの疫学的解析, 口腔疾患との関わりを解明する手段の一つとして応用できると考えられる.
ISSN:0285-922X