側脳室のテント下進展を伴った脈絡叢乳頭腫の1例

症例は9歳女児で, 歩行のふらつき, 嘔吐等を主訴として来院した. CT上, 左側脳室内に強く増強される巨大高吸収域を, そして高頭蓋窩には増強されない低吸収域を認め, 側脳室原発の嚢胞性腫瘍と診断した. 手術施行し, 側脳室腫瘍を摘出すると, 側脳室に連続する形でテント下に嚢胞が現れ, それは一見して脳室様に見えた. 組織学的に側脳室腫瘍は脈絡叢乳頭腫であったが, テント下嚢胞には腫瘍組織は認められず, グリア組織, 軟膜, クモ膜を認めた. 従来, 著明な水頭症に伴い解剖学的に脆弱な側脳室三角部円側が破綻し, 軟膜下髄液貯留という形でテント下嚢胞が形成されることはしばしば報告されてきた....

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Published in:Neurologia medico-chirurgica Vol. 23; no. suppl; p. 18
Main Authors: 大里孝夫, 井須豊彦, 阿部弘, 都留美都雄, 田代邦雄, 竹井秀敏, 宮坂和男
Format: Journal Article
Language:Japanese
Published: 日本脳神経外科学会 1983
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Description
Summary:症例は9歳女児で, 歩行のふらつき, 嘔吐等を主訴として来院した. CT上, 左側脳室内に強く増強される巨大高吸収域を, そして高頭蓋窩には増強されない低吸収域を認め, 側脳室原発の嚢胞性腫瘍と診断した. 手術施行し, 側脳室腫瘍を摘出すると, 側脳室に連続する形でテント下に嚢胞が現れ, それは一見して脳室様に見えた. 組織学的に側脳室腫瘍は脈絡叢乳頭腫であったが, テント下嚢胞には腫瘍組織は認められず, グリア組織, 軟膜, クモ膜を認めた. 従来, 著明な水頭症に伴い解剖学的に脆弱な側脳室三角部円側が破綻し, 軟膜下髄液貯留という形でテント下嚢胞が形成されることはしばしば報告されてきた. だが本症例の場合, 三角部内側が破綻することなく拡大し, テント切痕を越えてテント下に進展したものと考えられ, 原因疾患が側脳室腫瘍であったことともあわせ, 嚢胞形成機序の上で特異な1例と思われた.
ISSN:0470-8105