障害歯科の現状とこれから

16年9月から障害者歯科が新設診療部門のひとつとして, 心身の障害により通常の歯科保健や治療に適応するが困難で特別な配慮が必要な方を対象に開設され, 4階小児歯科外来の一角で午前中を中心に外来診療を開始している. これまで昭和大学歯科病院における心身障害者の受け入れは一部, 症例に応じて各専門科で個々に対応がなされる以外は, 小児歯科の障害児外来で積極的になされてきた. そのような経緯からこれまでの小児歯科における心身障害(児)者の来院状況をまじえながらのその動向と現状を紹介した. 昭和52年の病院開設以来, 小児歯科の初診患者に占める障害者の割合は年々少しずつ増加しており, 最近では25%(...

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Published in:昭和歯学会雑誌 Vol. 25; no. 1; p. 41
Main Author: 佐藤昌史
Format: Journal Article
Language:Japanese
Published: 昭和大学・昭和歯学会 31-03-2005
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Summary:16年9月から障害者歯科が新設診療部門のひとつとして, 心身の障害により通常の歯科保健や治療に適応するが困難で特別な配慮が必要な方を対象に開設され, 4階小児歯科外来の一角で午前中を中心に外来診療を開始している. これまで昭和大学歯科病院における心身障害者の受け入れは一部, 症例に応じて各専門科で個々に対応がなされる以外は, 小児歯科の障害児外来で積極的になされてきた. そのような経緯からこれまでの小児歯科における心身障害(児)者の来院状況をまじえながらのその動向と現状を紹介した. 昭和52年の病院開設以来, 小児歯科の初診患者に占める障害者の割合は年々少しずつ増加しており, 最近では25%(約200名)を占め年齢分布も0~37歳となっている. 障害の種類は口唇口蓋裂が約50%で, 脳性痳痺や精神遅滞に代表される運動, 知能障害が約30%, 心疾患等の内部障害が20%程度である. 1~2歳で来院することの多い口唇口蓋裂患者を除いた障害(児)者の主訴は, う蝕が約60%を占めており, 診療形態は可能な限り外来治療を中心に行っているが, そのほとんどの診療場面では術者と衛生士以外にも複数の介助者を必要としている. 多数歯重症う蝕の者や外来での行動調整が非常に困難な者では, 麻酔科や病棟の協力の下, 全身麻酔科歯科集中治療が実施され, 年間約20症例が適応となっている. 一方でこれらの障害(児)者に対しては, Cure以上にCareに重点を置くことが必要であるが, 患者を取り巻く様々な背景から日常のホームケアが非常に困難なケースも多く見受けられ, 口腔疾患の再発, 加齢に伴う歯周疾患の重症化や歯の喪失に対して, より各専門科からの協力の必要性が実感され, 今後の体制整備に努力することが急務と考えられる. また, 運動, 知能障害者の4人に1人が車椅子等による入室を必要としており, 設備の充実と安全面への配慮も十分に検討される必要がある.
ISSN:0285-922X