(2)Ribavirinの細胞性免疫応答調節作用に基づく抗腫瘍免疫応答誘導の試み

様々な腫瘍が宿主免疫学的監視機構を逃避し生着, 増殖する背景には腫瘍自身の抗原性の変化と伴に宿主細胞性免疫応答の劣化が一因となることが知られている. 慢性C型肝炎に対するInterferon(IFN)治療の補助薬であるRibavirin(RBV)は, 単核球が産生するType1, Type2 cytokine産生に影響し, 細胞性免疫応答を優位に導く作用を有していることから, 担癌宿主における減弱した細胞性免疫応答を賦活し, 腫瘍制御活性を増幅する可能性が期待される. こうした事実に基づき, 今回我々は動物モデルを用いてin vivoにおけるRBVの抗腫瘍免疫応答活性化に関する基礎的検討を行い...

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Published in:Journal of Nippon Medical School Vol. 71; no. 6; p. 458
Main Authors: 中塚雄久, 片倉玲樹, 厚川正則, 清水真澄, 田村秀人, 津久井拓, 高橋秀実, 坂本長逸
Format: Journal Article
Language:Japanese
Published: 日本医科大学医学会 15-11-2004
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Summary:様々な腫瘍が宿主免疫学的監視機構を逃避し生着, 増殖する背景には腫瘍自身の抗原性の変化と伴に宿主細胞性免疫応答の劣化が一因となることが知られている. 慢性C型肝炎に対するInterferon(IFN)治療の補助薬であるRibavirin(RBV)は, 単核球が産生するType1, Type2 cytokine産生に影響し, 細胞性免疫応答を優位に導く作用を有していることから, 担癌宿主における減弱した細胞性免疫応答を賦活し, 腫瘍制御活性を増幅する可能性が期待される. こうした事実に基づき, 今回我々は動物モデルを用いてin vivoにおけるRBVの抗腫瘍免疫応答活性化に関する基礎的検討を行い, 以下の結果を得たので報告する. 【材料と方法】1)RBVによる細胞性免疫応答増幅効果の検証:DBA/2マウス(H-2d, 6~8週齢, メス)に0~75mg/kgのRBVを7日間腹腔内投与し, day8に脾細胞浮遊液を作成した. 5×106個の脾臓細胞をin vitroでPhorbol Millistate Acetate(PMA)およびIonomycin(ION)で刺激し, 48時間後の培養上清中に産生されるType1 cytokine(Interferonγ, IFNγ), Type2 cytokine(Interleukin4, IL4)をEnzyme-linked Immunosorbent Assay(ELISA)で定量した. 2)in vivoにおけるRBV投与の腫瘍増殖抑制効果の検証:DBA/2の背部皮下に接種したmastocyotoma株P815(H-2d)の増殖をRBV連日投与群と対照群で比較した. RBV投与群では, 10~25mg/kgのRBVを7日間腹腔内投与した後にP815を接種し, その後同量のRBVを連日腹腔内投与した. 対照群では, Phosphate Buffer Saline(PBS)を7日間腹腔内投与した後にP815を接種し, その後PBSを連日腹腔内投与した. 腫瘍径を経時的に測定し, 長径20mmに到達した時点をendopointとした. マウスの取り扱いは日本医科大学動物実験倫理規定およびNational Institute of Health(NIH)動物倫理規定を遵守した. 【結果】1)10mg/kgのRBVを投与したマウスの脾臓細胞でPMA, ION刺激後にIFNγ産生が増加する傾向がみられたが, 25~75mg/kgのRBVを投与したマウス脾臓細胞におけるIFNγ産生は容量依存性に減少した. 一方IL4産生は容量依存性に抑制された. 2)DBA/2の背部皮下に接種したP815は経時的に増殖した. 一方10mg/kgのRBVを腹腔内投与したマウスに接種したP815の増殖は経時的に抑制された. 【考察と展望】RBVは細胞性免疫応答による免疫学的監視機構を賦活し, 癌細胞生着, 増殖抑制効果を発揮すると考えられた. この事実からRBV投与が様々な癌種に対する2次予防効果を発揮する可能性が示唆され, また慢性C型肝炎に対するRBV投与が長期的な肝発癌の抑止につながる可能性が期待された. 今回の結果に基づき, 現在RBVによって活性化される免疫担当細胞の同定を行っており, またRBVによる細胞性免疫応答活性化の機序解明, 肝細胞癌株に対する上記結果の再現性を検証中である.
ISSN:1345-4676