1.交通事故による高エネルギー外傷によって頸椎不安定性を生じた小児に対する保存治療の一経験
脳幹部周囲から, 上位頸椎にかけての高度な損傷は通常致命的であり, 治療の機会を得ることは稀と考えられる. 今回我々は交通外傷によって, 頭蓋底から後頭骨, 上位頸椎にかけて高度な損傷を伴った小児1例の治療を経験したので報告する. 【病歴】症例は12歳男性. 既往歴に特記すべきことはない. H17/6/1登校時に自転車に乗っていてトラックにはねられ受傷し, 当院救急外来に搬送された. 来院時意識は軽度混濁, 顔面の著明な変形と, 口腔内出血, 右大腿骨骨折を認めたが, 四肢に明らかな麻痺を認めなかった. 画像所見では, 前方からの強大な外力によって顔面骨が広範囲高度に圧潰され, これに伴って頭...
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Published in: | THE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 56; no. 3; p. 277 |
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Main Authors: | , , , , , |
Format: | Journal Article |
Language: | Japanese |
Published: |
北関東医学会
2006
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Online Access: | Get full text |
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Abstract | 脳幹部周囲から, 上位頸椎にかけての高度な損傷は通常致命的であり, 治療の機会を得ることは稀と考えられる. 今回我々は交通外傷によって, 頭蓋底から後頭骨, 上位頸椎にかけて高度な損傷を伴った小児1例の治療を経験したので報告する. 【病歴】症例は12歳男性. 既往歴に特記すべきことはない. H17/6/1登校時に自転車に乗っていてトラックにはねられ受傷し, 当院救急外来に搬送された. 来院時意識は軽度混濁, 顔面の著明な変形と, 口腔内出血, 右大腿骨骨折を認めたが, 四肢に明らかな麻痺を認めなかった. 画像所見では, 前方からの強大な外力によって顔面骨が広範囲高度に圧潰され, これに伴って頭蓋底が上前方から下後方に大きく傾斜し, 後頭骨斜台にも骨折は及んでいた. それに併せて環椎も傾斜し, 後頭環椎関節は後方に脱臼し, 軸椎歯突起の後屈変形と, 上位頸椎の後彎が認められた. これらの変形のために, 延髄は大後頭孔前縁によって前方から圧迫され, O-C~C2レベルで脊髄は強く前彎していた. 神経症状が全く認められなかったこと等から, 頸椎の手術は行わず, ハローベスト装着による保存療法の方針とした. 肺挫傷を伴っており, 全身状態の急変があり得る状態であったため, ハローベストは即座に装着せず, 5日後に装着し, 脳幹部~上位頸髄に及ぼす影響を考慮し, 装着に際して, 頸椎のアライメント矯正は行わなかった. 10週後にハローベスト除去し, フィラデルフィア装具装着にて退院となり, 4ヶ月でこれも除去となった. 現在神経症状や頸椎の運動障害, 痛みはなく, 徐々に軽スポーツも可能となっている. 10ヵ月後の動態X-Pにて, 頸椎の不安定性は軽度残存し, 変形は残っているため, 今後慎重な経過観察が必要と考えられる. |
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AbstractList | 脳幹部周囲から, 上位頸椎にかけての高度な損傷は通常致命的であり, 治療の機会を得ることは稀と考えられる. 今回我々は交通外傷によって, 頭蓋底から後頭骨, 上位頸椎にかけて高度な損傷を伴った小児1例の治療を経験したので報告する. 【病歴】症例は12歳男性. 既往歴に特記すべきことはない. H17/6/1登校時に自転車に乗っていてトラックにはねられ受傷し, 当院救急外来に搬送された. 来院時意識は軽度混濁, 顔面の著明な変形と, 口腔内出血, 右大腿骨骨折を認めたが, 四肢に明らかな麻痺を認めなかった. 画像所見では, 前方からの強大な外力によって顔面骨が広範囲高度に圧潰され, これに伴って頭蓋底が上前方から下後方に大きく傾斜し, 後頭骨斜台にも骨折は及んでいた. それに併せて環椎も傾斜し, 後頭環椎関節は後方に脱臼し, 軸椎歯突起の後屈変形と, 上位頸椎の後彎が認められた. これらの変形のために, 延髄は大後頭孔前縁によって前方から圧迫され, O-C~C2レベルで脊髄は強く前彎していた. 神経症状が全く認められなかったこと等から, 頸椎の手術は行わず, ハローベスト装着による保存療法の方針とした. 肺挫傷を伴っており, 全身状態の急変があり得る状態であったため, ハローベストは即座に装着せず, 5日後に装着し, 脳幹部~上位頸髄に及ぼす影響を考慮し, 装着に際して, 頸椎のアライメント矯正は行わなかった. 10週後にハローベスト除去し, フィラデルフィア装具装着にて退院となり, 4ヶ月でこれも除去となった. 現在神経症状や頸椎の運動障害, 痛みはなく, 徐々に軽スポーツも可能となっている. 10ヵ月後の動態X-Pにて, 頸椎の不安定性は軽度残存し, 変形は残っているため, 今後慎重な経過観察が必要と考えられる. |
Author | 荒毅 松下正寿 竹内公彦 星野貴光 浅見和義 久保井卓郎 |
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