P-57)肺動脈血栓塞栓症の吸引療法に関する臨床病理学的検討

肺動脈血栓塞栓症(PTE)に対して, カテーテルによる血栓吸引療法が行われている. 吸引物の病理組織学的所見と臨床経過について検討した. 材料と方法:日本医科大学付属病院で, PTEの診断により吸引された血栓塞栓物が病理に提出された22例(男性6例, 女性16例, 年齢28~82歳, 平均59.7歳)を対象とした. 病理組織はH-EおよびEMG染色により光顕的に観察した. 結果と考察:臨床経過では慢性PTE3例, 慢性に急性症状が加わったもの7例, 急性発症12例であった. 基礎疾患は悪性腫瘍6例, 骨盤, 下肢骨折3例, 長期臥床2例, 先天性血栓性素因1例, 下肢静脈瘤1例で, 深部静脈血...

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Published in:Journal of Nippon Medical School Vol. 71; no. 6; pp. 482 - 483
Main Authors: 恩田直美, 竹間友紀, 杼窪寛, 羽田圭佑, ジュラットトホテ, 富樫真由子, 塚田克也, 田村浩一, 杉崎祐一
Format: Journal Article
Language:Japanese
Published: 日本医科大学医学会 2004
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Description
Summary:肺動脈血栓塞栓症(PTE)に対して, カテーテルによる血栓吸引療法が行われている. 吸引物の病理組織学的所見と臨床経過について検討した. 材料と方法:日本医科大学付属病院で, PTEの診断により吸引された血栓塞栓物が病理に提出された22例(男性6例, 女性16例, 年齢28~82歳, 平均59.7歳)を対象とした. 病理組織はH-EおよびEMG染色により光顕的に観察した. 結果と考察:臨床経過では慢性PTE3例, 慢性に急性症状が加わったもの7例, 急性発症12例であった. 基礎疾患は悪性腫瘍6例, 骨盤, 下肢骨折3例, 長期臥床2例, 先天性血栓性素因1例, 下肢静脈瘤1例で, 深部静脈血栓が確認されたものは12例であった. 労作時呼吸困難発現後血栓吸引までの期間は発症当日~10年に渡っていた. 吸引物は, 新鮮血栓のみ3例(発症当日吸引), 器質化あり19例(発症当日~症状増悪後3ヵ月で吸引)であった. 組織内に肺動脈壁から連続する器質化像が認められた例があり, 塞栓付着部から器質化が起きることが示唆された. また発症当日に吸引した塞栓に器質化が見られた例があり, 器質化した深部静脈血栓も塞栓になりうることが確認された. 15例(68%)で中膜弾性板を含む肺動脈壁の一部が血栓内に認められ, 吸引療法により健常な肺動脈壁が傷害されることが明らかになった. この傷害部に新たな血栓が形成される可能性があり, 術後の血栓予防が重要と考えられた.
ISSN:1345-4676