P-19)心筋梗塞治癒過程でみられる凝固壊死心筋の長期残存について

目的:心筋梗塞巣内の凝固壊死心筋が, どの程度吸収されずに残存するのかについて検討した. 対象および方法:1989~2000年の剖検例中, 病理学的に心筋梗塞と診断された305例(男性221例, 女性84例, 平均72.3歳)で, 凝固壊死像について検討した. この内, 発作後3週以上経過しても, 梗塞巣に白血球浸潤を伴わない凝固壊死像が認められた8例(男性7例, 女性1例, 平均72. 1歳)について, 臨床病理学的に検討を加えるとともに, 抗ミオグロビン(MB)抗体による免疫組織化学的検討を加え, 急性心筋梗塞症例の梗塞部と比較した. 結果:8例はいずれも貫壁性梗塞症例で, 凝固壊死像は最...

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Published in:Journal of Nippon Medical School Vol. 68; no. 6; p. 577
Main Authors: 大森寛子, 揖斐孝之, 橋本聡, 小野真平, 田村浩一, 杉崎祐一
Format: Journal Article
Language:Japanese
Published: 日本医科大学医学会 2001
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Summary:目的:心筋梗塞巣内の凝固壊死心筋が, どの程度吸収されずに残存するのかについて検討した. 対象および方法:1989~2000年の剖検例中, 病理学的に心筋梗塞と診断された305例(男性221例, 女性84例, 平均72.3歳)で, 凝固壊死像について検討した. この内, 発作後3週以上経過しても, 梗塞巣に白血球浸潤を伴わない凝固壊死像が認められた8例(男性7例, 女性1例, 平均72. 1歳)について, 臨床病理学的に検討を加えるとともに, 抗ミオグロビン(MB)抗体による免疫組織化学的検討を加え, 急性心筋梗塞症例の梗塞部と比較した. 結果:8例はいずれも貫壁性梗塞症例で, 凝固壊死像は最長で発作後79日まで認められたが, 梗塞部位, 冠動脈狭窄所見に共通する特徴はなかった. 全例とも発作後には一旦心不全状態から回復しており, 治癒過程遷延の要因は認めなかった. 一般光顕では, 成熟膠原線維よりなる瘢痕組織の中心に壊死心筋の集塊があり, 同部に白血球の浸潤は認めなかった. 周辺部ではマクロファージによる壊死心筋の貧食像を認めた. 免疫組織化学では間質を含めてMBは陰性で, 陳旧性梗塞と同部位に再梗塞を生じて死亡した例との鑑別に有用であった. 剖検診断では8例中4例が新鮮梗塞を伴ったものと判定されていた. 考察:凝固壊死心筋が長期にわたり吸収されずに残存することの認識が正確な診断を下すために重要である. 脆弱な壊死心筋の残存が患者の予後や合併症に及ぼす影響については, 今後さらに検討を要する.
ISSN:1345-4676