P-112)慢性期DeBakey IIIb型大動脈解離に対してstent-graftによるentry閉鎖術が奏功した1例
発症9ヵ月後の慢性期大動脈解離に対してstent-graft留置術を施行し, 良好な治療結果が得られたので報告する. 症例は54歳, 男性. 大動脈解離は, 左鎖骨下動脈分岐部より約2cm末梢の下行大動脈にentryを有し, 腹腔動脈分岐部直上に大きなre-entryを有するDeBakey IIIb型, 偽腔開存型で, 著明な真腔の狭小化と偽腔の拡大を伴い血管造影上entry, re-entry間に明らかな交通口は認めなかった. stent-graftは中間部6cmをダクロンで被覆した直径3cm, 全長13cmの4連Z-stentを用いた. 静脈麻酔下に右大腿動脈を切開露出し, 20Frシース...
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Published in: | Journal of Nippon Medical School Vol. 65; no. 6; p. 563 |
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Format: | Journal Article |
Language: | Japanese |
Published: |
日本医科大学医学会
1998
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Summary: | 発症9ヵ月後の慢性期大動脈解離に対してstent-graft留置術を施行し, 良好な治療結果が得られたので報告する. 症例は54歳, 男性. 大動脈解離は, 左鎖骨下動脈分岐部より約2cm末梢の下行大動脈にentryを有し, 腹腔動脈分岐部直上に大きなre-entryを有するDeBakey IIIb型, 偽腔開存型で, 著明な真腔の狭小化と偽腔の拡大を伴い血管造影上entry, re-entry間に明らかな交通口は認めなかった. stent-graftは中間部6cmをダクロンで被覆した直径3cm, 全長13cmの4連Z-stentを用いた. 静脈麻酔下に右大腿動脈を切開露出し, 20Frシースを介して, グラフトがentry部を閉鎖するように留置した. 手技に要した時間は2時間10分, 出血量は356mlで, 特に合併症も無く手技的成功が得られた. 留置8日, 14日後の胸, 腹部CTで, entry部にわずかな偽腔への血流の1eak, re-entry部頭尾方向に約2cmの偽腔血流を残して, 偽腔内はほぼ完全に血栓化しているのが認められ, さらに2ヵ月後のCTでentry部のleakも完全に消失しているのが確認された. 大動脈解離に対するstent-graft留置術は, 新しい治療法として注目されている. 本例では偽腔のほぼ完全な血栓化が得られ, その有用性は極めて高いと考えられる. 本法は解離形態によって外科的手術に匹敵する治療効果が得られ, 今後器材や技術の進歩に伴ってその低侵襲性から適応はさらに拡大していくものと思われる. |
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ISSN: | 1345-4676 |