肝臓癌に対する温熱化学塞栓療法
温熱療法は, その抗癌効果がin vitro, in vivoの基礎的研究で証明されており, 副作用が少ないことや加温技術の進歩とともに, 肝臓癌治療においても, 新しい集学的治療の一環として1980年代半ばから注目された. 肝癌に対する温熱療法の第一の問題点は, 加温が難しいということである. それは, (1)肝癌が体表より距離があるため, (2)肝癌は血流の豊富な癌であり血流による冷却が強いため, 以上の2つの理由により良好な加温が困難なのである. そのため肝癌に対しては温熱療法単独では有効な腫瘍内温度上昇が得にくい. しかし一過性塞栓剤のDSMを肝動脈から分岐している腫瘍栄養動脈に動注す...
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Published in: | 日本ハイパーサーミア学会誌 Vol. 19; no. suppl; p. 47 |
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Format: | Journal Article |
Language: | Japanese |
Published: |
日本ハイパーサーミア学会
2003
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Summary: | 温熱療法は, その抗癌効果がin vitro, in vivoの基礎的研究で証明されており, 副作用が少ないことや加温技術の進歩とともに, 肝臓癌治療においても, 新しい集学的治療の一環として1980年代半ばから注目された. 肝癌に対する温熱療法の第一の問題点は, 加温が難しいということである. それは, (1)肝癌が体表より距離があるため, (2)肝癌は血流の豊富な癌であり血流による冷却が強いため, 以上の2つの理由により良好な加温が困難なのである. そのため肝癌に対しては温熱療法単独では有効な腫瘍内温度上昇が得にくい. しかし一過性塞栓剤のDSMを肝動脈から分岐している腫瘍栄養動脈に動注すると腫瘍の血流は1ないし2時間止まっているのでこの間に温熱療法を施行すれば腫瘍内温度をかなり上昇させることが可能である. われわれは, 1985年6月より切除不能肝細胞癌に対してDSMとアドリアマイシンを併用した化学塞栓療法を施行し, その一部の症例に対しては温熱療法を併用した. 治療法の選択については, 原則として, 温熱療法の併用は7cmを越える大きな腫瘍あるいはDSM化学塞栓療法に抵抗性の腫瘍を対象とした. 化学塞栓療法単独の場合には奏効率は42%であったが, これに温熱療法を併用すると奏効率は56%となった. 腫瘍の大きさからは, 最大経が7cm以下の症例の奏効率は化学塞栓療法単独で73%, 温熱療法の併用で56%であった. 一方, 7cmを越える症例では, 化学塞栓療法単独では奏効例を認めなかったのに対し, 温熱療法の併用で56%の奏効率を示した. すなわち, 腫瘍経が7cm以下の場合には, 化学塞栓療法単独でもかなりの効果が期待できるが, 7cm以上の腫瘍は, 化学塞栓療法単独での治療効果の限界と考えられ, 温熱療法の併用が必要と思われた. というのが当時のわれわれの見解であった. 近年, 超音波検査を用いた局所療法(ラジオ波焼杓療法など)が普及し, その局所制御能も著しく向上したため, 肝癌治療の主役となっている. しかし, 局所療法が困難で切除不能の進行肝細胞癌に対しては, Low dose FP療法を中心とした動注化学療法が試みられている. この化学療法に温熱療法を併用することは, われわれの臨床データから見て, 有意義なことと考えられる. このような症例に対しては, 温熱療法の施行可能な施設に転院して頂いてでも, 積極的に温熱療法を併用すべきと考える. また, 最近のわれわれの基礎的検討より, 温熱療法が, 癌の抗癌剤に対する抵抗性の獲得に抑制的に働いている可能性が認められる. 現在検討中ではあるが, 温熱療法と抗癌剤の併用の最善のタイミングは, 用いる抗癌剤により異なる可能性がある. 今後, in vitroからin vivoへと詳細な検討を行なうことにより, 温熱療法と抗癌剤の併用効果が高まることが期待される. |
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ISSN: | 0911-2529 |