意識陣害と下垂体ホルモンの日内リズム

意識障害と神経内分泌系の活動とは解剖学的にも機能的にも, 深い関連をもっている. 神経内分泌学的現象の一つである下垂体ホルモンの日内リズムと意識障害との関連性を検討した. 意識障害を呈した12症例(脳腫瘍3,破裂脳動脈瘤3,脳内出血3,水頭症2,脳挫傷1)について血中ACTH, GH, PRL, TSHを4時間ごとに測定し, その日内変動を, 中枢神経障害の部位, 意識障害レベル, 他の神経症状, 脳波所見, 予後などの臨床像との関連において分析した. 意識障害におけるGH, PRLの分泌パターンには正常にみられる日内リズムが失われ, 視床下部に浸潤した異所性松果体腫のPRLは持続的に約30n...

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Published in:Neurologia medico-chirurgica Vol. 16; no. suppl; pp. 60 - 61
Main Authors: 寺岡暉, 小林秀, 池田彰宏, 寺尾栄夫
Format: Journal Article
Language:Japanese
Published: 日本脳神経外科学会 1976
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Description
Summary:意識障害と神経内分泌系の活動とは解剖学的にも機能的にも, 深い関連をもっている. 神経内分泌学的現象の一つである下垂体ホルモンの日内リズムと意識障害との関連性を検討した. 意識障害を呈した12症例(脳腫瘍3,破裂脳動脈瘤3,脳内出血3,水頭症2,脳挫傷1)について血中ACTH, GH, PRL, TSHを4時間ごとに測定し, その日内変動を, 中枢神経障害の部位, 意識障害レベル, 他の神経症状, 脳波所見, 予後などの臨床像との関連において分析した. 意識障害におけるGH, PRLの分泌パターンには正常にみられる日内リズムが失われ, 視床下部に浸潤した異所性松果体腫のPRLは持続的に約30ng/mlの高値を示した. TSHにも日内リズムは認められない. ACTHの24時間分泌パターンは症例によってばらつきが大きく, 血中濃度の異常に高いものが多い. その中では濃度が高くて変動の幅が大きいものと, 濃度が比較的低く日内リズムのほとんど失われているものの2群が認められる. 変動の大きいものの最高値は正午から午後8時の間にあって, 正常のリズムと比較すると位相のずれまたは逆転が認められた. この群には水頭症, 脳梗塞, 初期の前頭葉gliomaなどが属しており, 治療後回復したものもある. 日内リズムの失われた群には脳底動脈瘤破裂や, 末期の前頭葉深部gliomaなどの重症例が含まれている. これらの症例では, 障害部位が視床下部, 中脳など中枢神経系深部にあって意識障害が高度であると同時に, 日内リズムの中枢支配が破壊されたためにリズムが消失したものと考えられる. 以上のごとく意識障害における脳下垂体ホルモンの日内リズムには位相の逆転またはずれを示すものと, リズムの消失しているものとがあり, これは病変部位, 障害の程度, 予後などとある程度関連性をもっていると考えられる.
ISSN:0470-8105