多機能性ボロン酸触媒による不斉共役付加反応の開発とキラルスイッチ反応への展開

「1. はじめに」 不斉共役付加反応は医薬品や天然物などにみられる不斉炭素を効率的に構築できるため, 重要な研究課題として位置づけられている. その中でも, α,β-不飽和カルボン酸1の共役付加体2は実用性の高いビルディングブロックであるが, 従来は1を活性化して得られるマイケル受容体3を基質とした触媒的不斉合成法が数多く報告されてきた. しかしこの合成手法には, 1に同当量の活性化基を導入する原子効率の課題に加えて, 必然的に多段階工程となる作業効率の課題が存在する. そこで, 筆者らはこの課題を解決する新たな合成手法として, 無保護の不飽和カルボン酸1を付加体2へと直接変換する触媒的不斉共...

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Published in:YAKUGAKU ZASSHI Vol. 141; no. 3; pp. 293 - 301
Main Author: 葉山, 登
Format: Journal Article
Language:Japanese
Published: 公益社団法人 日本薬学会 01-03-2021
日本薬学会
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Summary:「1. はじめに」 不斉共役付加反応は医薬品や天然物などにみられる不斉炭素を効率的に構築できるため, 重要な研究課題として位置づけられている. その中でも, α,β-不飽和カルボン酸1の共役付加体2は実用性の高いビルディングブロックであるが, 従来は1を活性化して得られるマイケル受容体3を基質とした触媒的不斉合成法が数多く報告されてきた. しかしこの合成手法には, 1に同当量の活性化基を導入する原子効率の課題に加えて, 必然的に多段階工程となる作業効率の課題が存在する. そこで, 筆者らはこの課題を解決する新たな合成手法として, 無保護の不飽和カルボン酸1を付加体2へと直接変換する触媒的不斉共役付加反応の開発を計画した. 「2. 触媒設計」 α,β-不飽和カルボン酸は不飽和アルデヒドやケトンなどと比べて, 求電子性が低く, さらに求核剤や触媒を不活化する酸性プロトンを有するため, 共役付加反応への適用が困難な基質である.
ISSN:0031-6903
1347-5231
DOI:10.1248/yakushi.20-00214