聴覚に関わる社会医学的諸問題 障害者総合支援法に該当しない難聴児を取り巻く諸問題と取り組み

要旨: 本稿では障害者総合支援法に該当しない難聴児, すなわち軽度・中等度難聴児の現況について概説する。 軽度・中等度難聴児は音や声にある程度反応があり, ゆっくりでも言語発達がみられるため, 発見や療育・補聴が遅れがちで, 言語力や情緒面などに問題が指摘されてきた。しかし, 近年の新生児聴覚スクリーニングの普及に伴い, 乳児期早期に発見され順調な成育を示す例も報告されるようになっている。その一方で, 新生児聴覚スクリーニング未受検児や遅発性難聴児・重複障害児などもまだ多く混在しており, 乳幼児健康診査のさらなる充実と症例の状況に応じた対応が望まれている。また早期診断によって補聴器装用の早期化...

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Published in:AUDIOLOGY JAPAN Vol. 56; no. 6; pp. 725 - 734
Main Author: 杉内, 智子
Format: Journal Article
Language:Japanese
Published: 一般社団法人 日本聴覚医学会 28-12-2013
日本聴覚医学会
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Summary:要旨: 本稿では障害者総合支援法に該当しない難聴児, すなわち軽度・中等度難聴児の現況について概説する。 軽度・中等度難聴児は音や声にある程度反応があり, ゆっくりでも言語発達がみられるため, 発見や療育・補聴が遅れがちで, 言語力や情緒面などに問題が指摘されてきた。しかし, 近年の新生児聴覚スクリーニングの普及に伴い, 乳児期早期に発見され順調な成育を示す例も報告されるようになっている。その一方で, 新生児聴覚スクリーニング未受検児や遅発性難聴児・重複障害児などもまだ多く混在しており, 乳幼児健康診査のさらなる充実と症例の状況に応じた対応が望まれている。また早期診断によって補聴器装用の早期化とその活用が高まっているが, ほとんどの軽度・中等度難聴児には支援法による経済的な援助がないため, 若き両親にとって補聴器購入が負担ともなっている。この状況に対する各方面からの働きかけによって, 2007年ころから徐々に, 都道府県単位あるいは市区町村での軽度・中等度難聴児補聴器助成事業創設が広まりをみせている。今後はこの事業のさらなる充実とともに, 軽度・中等度難聴児についても療育面でのより積極的な取り組みが期待される。
ISSN:0303-8106
1883-7301
DOI:10.4295/audiology.56.725