腹部大動脈瘤に対する待機的ステントグラフト内挿術後に対麻痺を発症した1例と本邦報告例の文献レビュー

症例は78歳,女性で,腎動脈下に最大径80 mmの腹部大動脈瘤を認めた.下腸間膜動脈は閉塞,両側内腸骨動脈は開存,肋間動脈は5対,腰動脈は3対が開存していた.Adamkiewicz動脈は同定できなかった.リムを両側総腸骨動脈にランディングしたEVARを行った.集中治療室帰室時より両下肢のしびれが継続し,術後4時間頃からL1以下の温痛覚脱失および両下肢運動麻痺を認めるようになった.対麻痺と診断し,ステロイドパルス療法,ナロキソン持続投与,脳脊髄液ドレナージを開始したが,症状は改善しなかった.MRIのT2WIでTh11~L1レベルの脊髄が腫大し高信号で,脊髄梗塞が疑われた.有効な予防法がなく,脳脊...

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Published in:日本血管外科学会雑誌 Vol. 33; no. 4; pp. 205 - 212
Main Authors: 大谷, 篤司, 髙木, 寿人
Format: Journal Article
Language:Japanese
Published: 特定非営利活動法人 日本血管外科学会 21-08-2024
日本血管外科学会
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Summary:症例は78歳,女性で,腎動脈下に最大径80 mmの腹部大動脈瘤を認めた.下腸間膜動脈は閉塞,両側内腸骨動脈は開存,肋間動脈は5対,腰動脈は3対が開存していた.Adamkiewicz動脈は同定できなかった.リムを両側総腸骨動脈にランディングしたEVARを行った.集中治療室帰室時より両下肢のしびれが継続し,術後4時間頃からL1以下の温痛覚脱失および両下肢運動麻痺を認めるようになった.対麻痺と診断し,ステロイドパルス療法,ナロキソン持続投与,脳脊髄液ドレナージを開始したが,症状は改善しなかった.MRIのT2WIでTh11~L1レベルの脊髄が腫大し高信号で,脊髄梗塞が疑われた.有効な予防法がなく,脳脊髄液ドレナージが治療法としてある程度有効とされているが,EVAR後に脊髄虚血が極めてまれながら発症する可能性があることを,術前のインフォームドコンセントの際に十分説明することが重要であると考えられる.
ISSN:0918-6778
1881-767X
DOI:10.11401/jsvs.24-00043