肝疾患に伴う糸球体病変にかんする研究 免疫組織像およびB型肝炎ウイルスの意義について
肝疾患752例を対象に尿所見を調べ,対象例中110例(激症および亜急性肝炎13例・急性肝炎6例・慢性肝炎11例・肝硬変80例)でえられた腎組織の光顕的観察を行ない,うち40例で免疫組織学的観察を行なつた.また99例では蛍光抗体直接法により糸球体におけるB型肝炎ウイルス(HBsAg)の局在を検索した.その結果,肝硬変例では急性および慢性肝炎に比べ,たんぱく尿,血尿の出現頻度が高く,また腎炎性尿所見は9.2%と高頻度にみられた.急性および慢性肝炎に合併した糸球体病変の組織像はさまざまであつたが,肝硬変では80例中51例と高頻度にメサンギウム増殖性変化を主体とする糸球体腎炎がみられ,高度な症例は膜性...
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Published in: | 日本内科学会雑誌 Vol. 67; no. 10; pp. 1212 - 1223 |
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Main Author: | |
Format: | Journal Article |
Language: | Japanese |
Published: |
一般社団法人 日本内科学会
01-10-1978
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Summary: | 肝疾患752例を対象に尿所見を調べ,対象例中110例(激症および亜急性肝炎13例・急性肝炎6例・慢性肝炎11例・肝硬変80例)でえられた腎組織の光顕的観察を行ない,うち40例で免疫組織学的観察を行なつた.また99例では蛍光抗体直接法により糸球体におけるB型肝炎ウイルス(HBsAg)の局在を検索した.その結果,肝硬変例では急性および慢性肝炎に比べ,たんぱく尿,血尿の出現頻度が高く,また腎炎性尿所見は9.2%と高頻度にみられた.急性および慢性肝炎に合併した糸球体病変の組織像はさまざまであつたが,肝硬変では80例中51例と高頻度にメサンギウム増殖性変化を主体とする糸球体腎炎がみられ,高度な症例は膜性増殖性糸球体腎炎像を呈していた.蛍光抗体法では慢性肝炎および肝硬変例の糸球体に免疫グロブリン, C3およびフィブリノーゲンの顆粒状沈着が高率にみられた.ことに肝硬変例ではメサンギウム領域にIgAが高度かつ高頻度に沈着していた.糸球体内のHBsAgを検索した99例中肝硬変4例で,係蹄壁からメサンギウム領域にHBsAgの局在が証明された.以上の知見より,肝硬変では腎炎性尿所見の発現頻度が高いこと,肝疾患ことに肝硬変に伴う糸球体病変は免疫複合体型糸球体腎炎として把握され,その一部にHBsAgが病因として関与しうることが明らかとなつた.さらに,慢性肝疾患に糸球体腎炎の好発する理由として,今回観察された低補体血症など,多様な機序が関係している可能性について考察した. |
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ISSN: | 0021-5384 1883-2083 |
DOI: | 10.2169/naika.67.1212 |