抗生物質の正常髄液移行の検討 FOM, CMNX, ABPC, DKBについて

抗生物質の正常髄液への経時的移行推移についての報告は極めて少ない。この移行動態を知ることにより, 脳脊髄膜感染予防に対しての抗生物質投与に際し有用な示唆が得られるものと考え, 血液髄液関門の透過性に変化がない正常髄液への移行についてfosfomycin, cefminox, ampicillin, dibekacinの経時的移行推移動態を検討した。 1. 対象は腰椎椎間板ヘルニアなど腰痛を主訴とする症例で, 脊髄造影術施行に際し, あらかじめ抗生物質を投与し, 髄液検査のため採取する髄液の一部を検体とした。これらの症例はすべて脳脊髄膜非感染例で, 髄液は正常髄液と考えられる。 2. 抗生物質は...

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Published in:CHEMOTHERAPY Vol. 36; no. 5; pp. 403 - 411
Main Authors: 倉田, 和夫, 小宮, 泉, 新開, 祥彦
Format: Journal Article
Language:Japanese
Published: 公益社団法人 日本化学療法学会 25-05-1988
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Description
Summary:抗生物質の正常髄液への経時的移行推移についての報告は極めて少ない。この移行動態を知ることにより, 脳脊髄膜感染予防に対しての抗生物質投与に際し有用な示唆が得られるものと考え, 血液髄液関門の透過性に変化がない正常髄液への移行についてfosfomycin, cefminox, ampicillin, dibekacinの経時的移行推移動態を検討した。 1. 対象は腰椎椎間板ヘルニアなど腰痛を主訴とする症例で, 脊髄造影術施行に際し, あらかじめ抗生物質を投与し, 髄液検査のため採取する髄液の一部を検体とした。これらの症例はすべて脳脊髄膜非感染例で, 髄液は正常髄液と考えられる。 2. 抗生物質はfosfomycin 4g35例, cefminox 1g20例, ampicillin 2g24例, dibekacin 100mg20例をいずれも30分点滴静注により投与し, それぞれ投与後の時間間隔を設定し, 血清中濃度および髄液中濃度を測定した。得られたデータから血清中濃度は薬動力学的解析により, 消失半減期はそれぞれ2.6, 2.2, 1.1, 1.7時間であった。 3. 髄液中濃度は各抗生物質により差はあるが, いずれも投与1~2時間を経過して髄液内に移行し, 3~4時間迄上昇を続けてピークに達し, その後は極めて緩徐に消失する推移を示している。髄液中濃度はfosfomycinが5~10μg/mlを認めた他はいずれも非常に低かった。
ISSN:0009-3165
1884-5894
DOI:10.11250/chemotherapy1953.36.403