ネズミコリネ菌のシリアンハムスターに対する病原性

シリアンハムスターから初めて分離されたネズミコリネ菌 (Corynebacterium kutscheri)の, 病原性を調べる目的で, 本菌の10, 103, 105および107を4週齢の雄シリアンハムスターの筋肉内または皮下に接種し, 10日間観察した後剖検を行った. 10または103接種では, 筋肉内および皮下接種群とも, 本菌による臨床症状, 肉眼的病変, 病理組織学的病変は認められなかった. 一方, 105接種において, 筋肉内接種群では, 病理組織学的に中等度の肉芽組織の増生が認められた. 同, 皮下接種群では接種2日目より接種部位に3~6mmの結節が認められ, その後接種6~9日...

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Published in:Journal of Veterinary Medical Science Vol. 57; no. 4; pp. 715 - 719
Main Authors: 天尾, 弘実, 金本, 東学, 小向, 由美, 高橋, 和明, 澤田, 拓士, 斎藤, 学, 杉山, 公宏
Format: Journal Article
Language:English
Published: 公益社団法人 日本獣医学会 1995
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Description
Summary:シリアンハムスターから初めて分離されたネズミコリネ菌 (Corynebacterium kutscheri)の, 病原性を調べる目的で, 本菌の10, 103, 105および107を4週齢の雄シリアンハムスターの筋肉内または皮下に接種し, 10日間観察した後剖検を行った. 10または103接種では, 筋肉内および皮下接種群とも, 本菌による臨床症状, 肉眼的病変, 病理組織学的病変は認められなかった. 一方, 105接種において, 筋肉内接種群では, 病理組織学的に中等度の肉芽組織の増生が認められた. 同, 皮下接種群では接種2日目より接種部位に3~6mmの結節が認められ, その後接種6~9日目には外観からは不明瞭となり, 剖検では軽度な膿瘍が認められたにすぎなかった. 107接種では, 接種翌日より接種部位に, 筋肉内接種群では腫脹が、皮下接種群では5~12mmの結節が明瞭に認められた. その後6~9日目から次第に病変が小さくなる個体が見られたが, 剖検時では全例重度な膿瘍が観察された. ネズミコリネ菌の分離部位は, 1匹を除き病変部位に限られた. 凝集抗体は筋肉内接種および皮下接種群とも105, 107接種の個体のみから検出された. 以上のことより, 健康なシリアンハムスターにおいて, ネズミコリネ菌が創傷から皮下や筋肉内に感染した場合, 105以上の感染で膿瘍を形成するが, 病変は局所にとどまることが示唆された.
ISSN:0916-7250
1347-7439
DOI:10.1292/jvms.57.715