プロテオーム解析法を用いた膀胱癌診断法の開発

目的:プロテオーム解析法は, タンパク質の網羅的な解析法として様々な生物試料の解析に用いられている. この解析法はタンパク質の量的質的変化を同時に検出できるため, 臨床検査に応用することで, 患者の病態をより詳細に把握できるのではないかと期待されている. ところが, 血液や尿といった一般的な臨床検査検体中には多量の血清タンパク質が存在し, それらが疾患関連タンパク質の検出を困難にしているという問題があり, 未だプロテオーム解析法の診断への応用例は殆どない. 今回われわれは尿検体の群特異性アフィニティー担体による前処理とプロテオーム解析法とを組み合わせ, 膀胱癌の診断へ応用する検討を行った. 対...

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Published in:Journal of Nippon Medical School Vol. 70; no. 6; p. 585
Main Authors: 齋藤実, 永井尚生, 江見充, 木本真史, 島田幸恵, 藤井亮治, 秀道広, 荒木映雄, 碓井亞, 吉里勝利
Format: Journal Article
Language:Japanese
Published: 日本医科大学医学会 15-12-2003
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Summary:目的:プロテオーム解析法は, タンパク質の網羅的な解析法として様々な生物試料の解析に用いられている. この解析法はタンパク質の量的質的変化を同時に検出できるため, 臨床検査に応用することで, 患者の病態をより詳細に把握できるのではないかと期待されている. ところが, 血液や尿といった一般的な臨床検査検体中には多量の血清タンパク質が存在し, それらが疾患関連タンパク質の検出を困難にしているという問題があり, 未だプロテオーム解析法の診断への応用例は殆どない. 今回われわれは尿検体の群特異性アフィニティー担体による前処理とプロテオーム解析法とを組み合わせ, 膀胱癌の診断へ応用する検討を行った. 対象および方法:膀胱癌患者, 前立腺肥大症患者, 健常人の尿検体をゼラチンビーズによって処理し, 結合画分を二次元電気泳動によって分離後, タンパク質スポットパターンを比較した. 結果:膀胱癌患者尿中から複数の癌関連タンパク質が検出されたが, 前立腺肥大症患者, 健常人の尿中からはほとんど検出されなかった. それらのタンパク質スポットの強度や発現パターンと, 病理学的検査による膀胱癌の深達度との間に相関性が認められた. 考察:今回われわれが開発した手法は非侵襲的に膀胱癌の深達度をある程度判定可能なため, 術前の深達度判定や再発モニタリングなどへの応用が期待される.
ISSN:1345-4676