ステロイド療法が著効を奏した糖尿病に合併したリポイドネフローシスの1例

症例は38才,女性. 9年前より糖尿病を指摘されたが,放置していた.浮腫を主訴として入院.入院時,理学的に,顔面と下肢の浮腫,腹水を認め,両側下肢振動覚低下,アキレス腱反射は減弱していた.検査所見では,空腹時血糖271mg/dl,糖尿病性網膜症,末梢神経障害とともに,ネフローゼ症候群を呈していた.腎生検(光顕,電顕,蛍光抗体法)により糖尿病に合餅した微小変化群と診断した.入院後,第66日目よりステロイド治療開始, 10日後に尿蛋白および浮腫消失し,低蛋白血症や高脂血症も改善がみられた.その後,ステロイド薬を漸減,中止したが,蛋白尿出現せず,完全寛解が得られた.糖尿病にネフローゼ症候群が合併する...

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Published in:日本内科学会雑誌 Vol. 73; no. 1; pp. 84 - 88
Main Authors: 佐川, 智子, 石井, 仁美, 水入, 苑生, 小原, 武博, 平田, 清文, 金子, 浩, 川村, 貞夫
Format: Journal Article
Language:Japanese
Published: 一般社団法人 日本内科学会 10-01-1984
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Summary:症例は38才,女性. 9年前より糖尿病を指摘されたが,放置していた.浮腫を主訴として入院.入院時,理学的に,顔面と下肢の浮腫,腹水を認め,両側下肢振動覚低下,アキレス腱反射は減弱していた.検査所見では,空腹時血糖271mg/dl,糖尿病性網膜症,末梢神経障害とともに,ネフローゼ症候群を呈していた.腎生検(光顕,電顕,蛍光抗体法)により糖尿病に合餅した微小変化群と診断した.入院後,第66日目よりステロイド治療開始, 10日後に尿蛋白および浮腫消失し,低蛋白血症や高脂血症も改善がみられた.その後,ステロイド薬を漸減,中止したが,蛋白尿出現せず,完全寛解が得られた.糖尿病にネフローゼ症候群が合併することはしばしばあるが,その原因が糖尿病性腎症でなく,原発性腎疾患のリポイドネフローシスであることは極めてまれである,しかも,ステロイド療法により,短期間に完全寛解しえた.糖尿病患者において,糖尿病性腎症以外の原発生腎疾患を腎生検で確定診断することは腎病変の予後と治療において極めて重要と考えられた.
ISSN:0021-5384
1883-2083
DOI:10.2169/naika.73.84