生体肝移植の術後管理と合併症

本邦では, 1989年に生体肝移植が始まって以来, 2001年末までに1, 700例を超す生体肝移植が行われている. 生体肝移植の手術手技と緻密な術後管理の確立により術後生存率は80%となった. 当初主な適応疾患は胆道閉鎖症を中心とする小児の胆汁うっ滞性肝疾患, 代謝性肝疾患, 劇症肝不全などであったが, 現在では成人のウイルス性肝硬変, 肝臓癌にも適応が広がりつつある1)2). 移植を受ける患者は著明な肝機能低下, 劣悪な全身状態などのため, 一旦術後合併症が起こると時に致命的になる. このため厳重な術後管理が必要となる. この際, 一般的な消化器外科周術期管理に加え, 生体肝移植に特有な合...

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Published in:Journal of Nippon Medical School Vol. 70; no. 6; pp. 522 - 527
Main Authors: 清水, 哲也, 田尻, 孝, 秋丸, 琥甫, 吉田, 寛, 横室, 茂樹, 真々田, 裕宏, 谷合, 信彦, 川野, 陽一, 水口, 義昭, 高橋, 翼, 水田, 耕一, 河原崎, 秀雄
Format: Journal Article
Language:Japanese
Published: 日本医科大学医学会 2003
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Description
Summary:本邦では, 1989年に生体肝移植が始まって以来, 2001年末までに1, 700例を超す生体肝移植が行われている. 生体肝移植の手術手技と緻密な術後管理の確立により術後生存率は80%となった. 当初主な適応疾患は胆道閉鎖症を中心とする小児の胆汁うっ滞性肝疾患, 代謝性肝疾患, 劇症肝不全などであったが, 現在では成人のウイルス性肝硬変, 肝臓癌にも適応が広がりつつある1)2). 移植を受ける患者は著明な肝機能低下, 劣悪な全身状態などのため, 一旦術後合併症が起こると時に致命的になる. このため厳重な術後管理が必要となる. この際, 一般的な消化器外科周術期管理に加え, 生体肝移植に特有な合併症(吻合血管の血栓症, 拒絶, 免疫抑制に伴う易感染症など)の対策も必要となる. 本稿では, 生体肝移植における術後管理と合併症について概説する. <術後管理の実際>肝移植後にはさまざまな合併症が起こりうる. それぞれの合併症の好発時期(表1)を考慮した慎重な術後管理が必要である3). 1)呼吸管理および循環管理 移植手術後の患者は気管内挿管されたまま, 集中治療室に帰室する. 他の腹部手術と同様に長期の呼吸管理は術後肺炎や無気肺の原因となるため, 呼吸状態が許せば積極的に呼吸器からのウィーニングを進め, 翌日の抜管を目標とする. 術前からの低栄養, 免疫低下状態や呼吸器合併症(肝肺症候群合併例など)のため早期抜管が困難となることも多い.
ISSN:1345-4676
1347-3409
DOI:10.1272/jnms.70.522