脳血管掌編と血清補体価の変動

脳動脈瘤破裂後の脳血管攣縮を全身の生体反応の面より捉えることを目的とし, 血清補体価を測定, その変動が血管攣縮によってひき起こされる神経症状と相関のあることを観察した. 対象としたのは15例の脳動脈瘤破裂症例で, 7例は血管攣縮の見られた例, 8例は血管攣縮の見られなかった例である. 血清補体価の測定は, Mayer法により50%溶血価CH50として測定, 成分蛋白分析には一次拡散法を用いた. 結果:(1)血管攣縮悪化一死亡例(2). CH50は, 神経症状発現以前より高値をとり, 80単位を越し上昇する. C3_c 成分は, 症状発現早期に一時的に大きく低下するが, 再び元に復する. (I...

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Published in:Neurologia medico-chirurgica Vol. 19; no. suppl; pp. 33 - 34
Main Authors: 松谷雅生, 堀智勝, 池田彰宏, 寺尾栄夫, 嶋田孝吉, 西岡久寿弥
Format: Journal Article
Language:Japanese
Published: 日本脳神経外科学会 1979
Online Access:Get full text
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Description
Summary:脳動脈瘤破裂後の脳血管攣縮を全身の生体反応の面より捉えることを目的とし, 血清補体価を測定, その変動が血管攣縮によってひき起こされる神経症状と相関のあることを観察した. 対象としたのは15例の脳動脈瘤破裂症例で, 7例は血管攣縮の見られた例, 8例は血管攣縮の見られなかった例である. 血清補体価の測定は, Mayer法により50%溶血価CH50として測定, 成分蛋白分析には一次拡散法を用いた. 結果:(1)血管攣縮悪化一死亡例(2). CH50は, 神経症状発現以前より高値をとり, 80単位を越し上昇する. C3_c 成分は, 症状発現早期に一時的に大きく低下するが, 再び元に復する. (II)血管轡縮軽快例(5). もっとも症状の強い時期には, CH50は80単位近くまで上昇するが, 症状改善とともに下降する. 下降期に手術を行った症例では, 術後血管攣縮を見ていない, C3_c の経時測定の行えた3例中2例で一過性の低下が見られた. (III)血管攣縮(-)例(8). 出血後1ヵ月以内の症例では, CH50は軽度上昇するが, 60単位を越えない. 1ヵ月以後の症例ではすべて正常範囲である. 結論:血清補体価(CH50)の変動は, 血管攣縮による神経症状の経過ときわめてよく合致し, 80単位を越えて上昇する例は予後不良であった. 血管攣縮(-)例では, 正常範囲, または軽度上昇にとどまった. このことより血清補体価は, 血管攣縮による予後判定に有用な指標の一つと考える. 血管攣縮時のCH50の上昇, C3の低下より, 攣縮の原因について補体系から考察を加えると, 血管壁でのC3のconsumption, およびdepositが重要な所見と考えられる.
ISSN:0470-8105