6.近赤外線を用いた運動時活動骨格筋内の血液量動態の検討

【目的】運動時活動骨格筋内の血管は拡張し, 血流は増加するが, 血液量の変化を経時的に測定した検討は少ない. 近赤外線酸素モニター(near-infrared spectroscopy, NIRS)によって得られる酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb)と脱酸素化ヘモグロビン(deoxy-Hb)の和である総ヘモグロビン(total-Hb)は骨格筋内の小血管レベルでの単位体積中の血液量の変化, 即ち血管反応性を示すとされる. 今回, 我々はNIRSを用い, 健常者と慢性心不全患者の運動時活動骨格筋内の血液量の変化を検討した. 【方法】慢性心不全患者20人(拡張型心筋症14人, 高血圧性心疾患6人, 男...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in:THE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 53; no. 1; pp. 84 - 85
Main Authors: 清水弘行, 天野晶夫, 宮芳紀, 池田士郎, 羽鳥幹子, 長谷川昭, 倉林正彦
Format: Journal Article
Language:Japanese
Published: 北関東医学会 01-02-2003
Online Access:Get full text
Tags: Add Tag
No Tags, Be the first to tag this record!
Description
Summary:【目的】運動時活動骨格筋内の血管は拡張し, 血流は増加するが, 血液量の変化を経時的に測定した検討は少ない. 近赤外線酸素モニター(near-infrared spectroscopy, NIRS)によって得られる酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb)と脱酸素化ヘモグロビン(deoxy-Hb)の和である総ヘモグロビン(total-Hb)は骨格筋内の小血管レベルでの単位体積中の血液量の変化, 即ち血管反応性を示すとされる. 今回, 我々はNIRSを用い, 健常者と慢性心不全患者の運動時活動骨格筋内の血液量の変化を検討した. 【方法】慢性心不全患者20人(拡張型心筋症14人, 高血圧性心疾患6人, 男15人, 女5人, 平均年齢54歳, NYHA II~III度, 心エコー図で左室駆出率45%以下)と健常成人12人(平均年齢45歳男12人)を対象とした.座位エルゴメーターでramp負荷(10Watt/分)を行い,呼気ガス分析を併用し,嫌気性代謝閾値(AT),最高酸素摂取量(PeakVO2)を求めた.NIRS(島津製作所OM-200)のプローベを大腿外側広筋に装着し,1秒ごとにtotal-Hbを測定.運動中,42℃の温水中で手背静脈より1-2分ごとに採血,乳酸値を測定し,0.5mmol/L以上増加する直前の乳酸値を乳酸閾値とした.【結果】1)心不全,健常群とも運動中total-Hbは漸増したが,健常群では全例,最高値に達した後,漸減した.即ちtotal-Hbの変曲点を観察した.心不全患者では10例(50%)が同様な変化を示した.2)total-Hbの変曲点は両群ともATや乳酸閾値よりもやや遅れて出現した.心不全群でより少ない運動量で出現した.3)total-Hbの最高点の運動量は乳酸閾値と相関した(r=0.92,p<0.01).4)安静時から最高運動時までのtotal-Hbの変化量は心不全群で有意に低値であり(11.6±5.8%vs.19.8±6.2%p<0.05),AT,Peak VO2と相関を示した.【結論】骨格筋内の血液量は運動とともに漸増するが,乳酸閾値に達した後は漸減する.これは運動中の血圧維持のため血管拡張反応から収縮に転じるためと推測される.心不全患者では拡張反応も弱く,収縮反応を示すことも少なく,血管反応が低下していた.心不全では運動早期に骨格筋の血液量がピークに達してしまい,血管拡張反応が抑制され,運動耐容能低下につながると推察された.
ISSN:1343-2826