起立性低血圧における起立時の血圧下降パターンの検討特に起立性低血圧の成因との関連について

起立性低血圧の分類を再検討し,ひいてはその発生機序を明らかにすることを目的として,若年者(≦39才)・中年者(40~59才)・高年者(≧60才)の起立性低血圧において,起立時の血圧下降パターン,反射性頻脈の程度および自律神経機能を検討した.その結果,若年者の起立性低血圧では,起立維持により収縮期血圧・拡張期血圧ともに下降が促進され,同時に著明な反射性頻脈が認められた.交感神経機能の指標とされる寒冷昇圧試験の反射性血圧上昇はほぼ正常反応を示した.これに対し,中・高年者の起立性低血圧では,起立維持による血圧下降の促進は軽度であり,反射性頻脈は正常に認められた.寒冷昇圧試験の反射性血圧上昇は低反応を...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in:日本内科学会雑誌 Vol. 72; no. 11; pp. 1538 - 1546
Main Authors: 田村, 直俊, 島津, 邦男, 稗貫, 誠, 大岩, 海陽, 金, 浩澤, 山元, 敏正, 濱口, 勝彦
Format: Journal Article
Language:Japanese
Published: 一般社団法人 日本内科学会 1983
Online Access:Get full text
Tags: Add Tag
No Tags, Be the first to tag this record!
Description
Summary:起立性低血圧の分類を再検討し,ひいてはその発生機序を明らかにすることを目的として,若年者(≦39才)・中年者(40~59才)・高年者(≧60才)の起立性低血圧において,起立時の血圧下降パターン,反射性頻脈の程度および自律神経機能を検討した.その結果,若年者の起立性低血圧では,起立維持により収縮期血圧・拡張期血圧ともに下降が促進され,同時に著明な反射性頻脈が認められた.交感神経機能の指標とされる寒冷昇圧試験の反射性血圧上昇はほぼ正常反応を示した.これに対し,中・高年者の起立性低血圧では,起立維持による血圧下降の促進は軽度であり,反射性頻脈は正常に認められた.寒冷昇圧試験の反射性血圧上昇は低反応を示した.若年者の起立性低血圧は従来の“交感神経緊張型”に,中・高年者の起立性低血圧は“交感神経非緊張型”におのおのほぼ相当するものと考えられるが,前者において交感神経機能の指標が正常値を示しながら,起立維持により血圧下降が促進された事実は, β-adrenergic systemの機能亢進により,起立時に能動的な血管拡張が生じている可能性を示唆する.さらに,後者においても症例によつてはβ-adrenergic systemの機能亢進の関与を否定できず,起立性低血圧の発生機序を真に解明するためには, β-adrenergic systemの機能状態について検討する必要があるものと考える.
ISSN:0021-5384
1883-2083
DOI:10.2169/naika.72.1538