P-107)漿液性網膜剥離を合併した妊娠中毒症の1例

緒言:妊娠中毒症の経過中, 突然の視力障害や視野異常を訴える症例があり, これらの原因のひとつとして妊娠中毒症性網膜症があげられる. 今回, 急激な視力低下をきたした漿液性網膜剥離を合併した妊娠中毒症症例を経験したので報告する. 症例:症例は26歳の初産婦. 既往歴, 家族歴に特記すべきことなし. 前医で妊娠経過を観察中, 妊娠29週頃より尿蛋白, 切迫早産徴候を認め, 妊娠35週に子宮内胎児発育遅延, 妊娠中毒症の精査加療目的で当科紹介, 入院となった. 入院後, 妊娠中毒症の増悪傾向とともに視力低下, 黄色視を自覚し, 当院眼科受診. 視力は右0.5(矯正1.0), 左0.6(1.0)であ...

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Published in:Journal of Nippon Medical School Vol. 69; no. 6; p. 665
Main Authors: 山田浩子, 三田俊二, 三宅秀彦, 横田明重, 中井章人, 佐々木茂, 越野立夫, 北原由紀, 上玉麻子, 中山滋章
Format: Journal Article
Language:Japanese
Published: 日本医科大学医学会 2002
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Description
Summary:緒言:妊娠中毒症の経過中, 突然の視力障害や視野異常を訴える症例があり, これらの原因のひとつとして妊娠中毒症性網膜症があげられる. 今回, 急激な視力低下をきたした漿液性網膜剥離を合併した妊娠中毒症症例を経験したので報告する. 症例:症例は26歳の初産婦. 既往歴, 家族歴に特記すべきことなし. 前医で妊娠経過を観察中, 妊娠29週頃より尿蛋白, 切迫早産徴候を認め, 妊娠35週に子宮内胎児発育遅延, 妊娠中毒症の精査加療目的で当科紹介, 入院となった. 入院後, 妊娠中毒症の増悪傾向とともに視力低下, 黄色視を自覚し, 当院眼科受診. 視力は右0.5(矯正1.0), 左0.6(1.0)であったが, 眼底所見より漿液性網膜剥離の診断を受けた. このためterminationの適応と考え, 緊急帝王切開術を施行した. しかし, 術後2日目に急激な視力低下を認め, 矯正視力で両眼とも0.3となっていた. 妊娠中毒症は分娩後改善傾向を認め, 術後14日目に退院となった. 眼症状については当院眼科での外来管理となり, 術後62日目には両眼ともに矯正視力が1.0まで回復した. 考察:妊娠中毒症に合併した漿液性網膜剥離は一過性であることが多く, 妊娠中断により比較的短期間のうちに消退し, おおむね予後は良好とされている. しかし, 時に網脈絡膜の萎縮をきたし視機能障害を残す場合もあり, 注意深い経過観察が必要であると思われた.
ISSN:1345-4676