3. 最近当院で経験した術後のヘパリン起因性血小板減少症の2例

【はじめに】ヘパリン起因性血小板減少症(Heparin Induced Thrombocytopenia:HIT)はヘパリンと血小板第4因子(PF-4)の複合体に対する抗体が生じることで, 血小板減少や血栓症を合併する疾患である. 最近ヘパリンの使用頻度が増加するにつれ, HITの報告も増えており, 当院でも術後にHITを生じた症例を経験したので報告する. 【症例1】57歳, 女性. 卵巣癌疑いにて当院産婦人科にて手術を予定していたが, 下肢が重いとの訴えで来院. CTにて肺血栓塞栓症, 両側下腿の深部静脈血栓症が認められ入院となった. 第1病日から第6病日までヘパリン投与され, 第7病日に卵...

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Published in:THE KITAKANTO MEDICAL JOURNAL Vol. 58; no. 3; pp. 333 - 334
Main Authors: 内海英貴, 馬渡桃子, 野島美久, 家坂直子, 平川隆史, 峯岸敬, 家田敬輔, 中島正信, 加藤広行, 桑野博行
Format: Journal Article
Language:Japanese
Published: 北関東医学会 2008
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Description
Summary:【はじめに】ヘパリン起因性血小板減少症(Heparin Induced Thrombocytopenia:HIT)はヘパリンと血小板第4因子(PF-4)の複合体に対する抗体が生じることで, 血小板減少や血栓症を合併する疾患である. 最近ヘパリンの使用頻度が増加するにつれ, HITの報告も増えており, 当院でも術後にHITを生じた症例を経験したので報告する. 【症例1】57歳, 女性. 卵巣癌疑いにて当院産婦人科にて手術を予定していたが, 下肢が重いとの訴えで来院. CTにて肺血栓塞栓症, 両側下腿の深部静脈血栓症が認められ入院となった. 第1病日から第6病日までヘパリン投与され, 第7病日に卵巣摘出術施行. 第8病日よりヘパリン再開したところ, 第15病日に急激な血小板減少を認め当科にコンサルト. HITと診断し, 即座にヘパリンを中止し, 同日よりアルガトロバンによる抗凝固療法を開始. 新規の血栓症の合併なくワーファリンの内服に移行し退院した. 【症例2】60歳, 男性. 食道癌の手術目的にて当院第1外科に入院. 第8病日に食道全摘術, 胃管再建, 3領域リンパ節郭清を施行. 術後血栓症予防のため第12病日よりヘパリン投与開始. 第15病日に急激な血小板減少を認め, 当科コンサルト. HITと診断し, 即座にヘパリンを中止し, 同日よりアルガトロバンによる抗凝固療法を開始した. FDP, D-dimerの上昇が認められ, 血栓検索CTを行ったところ, 下行大動脈に壁在血栓を認めた. 同様にアルガトロバンの投与とその後にワーファリンの投与を行い退院となった. 【結語】血栓症予防ガイドラインが広く普及し, 術後の血栓予防のヘパリンの使用頻度は益々増えていくと思われる. 医療従事者はヘパリン使用時の血小板数のモニターを行い, 重大な副作用であるHITが生じた際には病態の認識と適切な対処が望まれる.
ISSN:1343-2826